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ガンバ大阪

Shinya Tsubokura

難しい時期だからこそ学べることもたくさんある。活動休止期間に学んだことや習慣を、今後に生かしていきたい。

現在、ガンバ大阪のアカデミーダイレクター兼ヘッドオブコーチングを務める坪倉進弥。20年以上、育成年代でさまざまな選手を育て上げてきた。コロナ禍に施した工夫、今後の展望について語る。

――簡単に自己紹介をお願いします。
坪倉 日本のガンバ大阪というクラブでアカデミーダイレクター兼ヘッドオブコーチングを務めています。ダイレクターとしてはアカデミー全体の責任者としてトレーニング環境を整えること、指導者の評価、アカデミーと強化部をつなぐ役割を担っています。
 ヘッドオブコーチングとしては、ピッチ上で選手をどう育成していくか、フットボールの哲学をまとめながら、それを計画的に遂行する業務を任されています。

――ガンバ大阪のアカデミーの哲学について教えてください。
坪倉 哲学の最上位に3つのヴィジョンがあります。一つ目は、18歳から21歳でトップチームの主力となり、チャンピオンズリーグ常連クラブで活躍する選手を育成すること、二つ目に、U-17、U-20を含め、ワールドカップメンバーに常時3人以上を輩出すること、最後に、クラブエンブレムの価値を高め、自身の成熟を追求できる人間を育てることです。

――アカデミーに所属する選手の出身地は?
坪倉 多岐にわたります。出身地のベースは大阪や関西地域ですが、沖縄や福岡、茨城からきている中学生もいますので、全国どこからでも受け入れています。G大阪にはそれを可能にする施設と、異なる背景を持った選手を惹きつけるブランド力、実績もあると感じます。

――アカデミーに所属する選手たちの年齢を教えてください。
坪倉 10歳から12歳のエリートクラス、中学生が所属するU-15、そして主に高校生が所属するU-18という編成です。エリートクラスにいる子どもたちは普段は少年団などでボールを蹴り、週に1度G大阪でプレーします。いずれもセレクションで選ばれた選手たちです。

――ピッチでのG大阪の特徴は?
坪倉 高い技術と創造性豊かな攻撃でゴールを量産する、という指針があります。G大阪は宇佐美貴史選手や堂安律選手、中村敬斗選手や食野亮太郎選手など、優れたアタッカーを輩出しました。自分たちで試合の主導権を握りながら、個人としてもグループとしても、力を発揮する、それがG大阪の目指すところです。

――アカデミーの近況をうかがいます。新型コロナウイルスの影響でチームとして活動ができなかった期間、どのように強化を図っていましたか。
坪倉 まずは、コミュニケーションを欠かさないようにしました。毎週、火曜と金曜に各コーチが自分の担当チームの選手一人ひとりに電話をかけ、特に体調管理に気をかけていました。また、雑談を通してどう過ごすべきかというアドバイスと、選手たちの要望など、ざっくばらんにいろいろな話をしてメンタルケアを心がけました。
 日本では中学3年生は高校受験、高校3年生は大学受験があります。そういった選手たちとは、選手と保護者、担当コーチ、私の4人でテレビ会議を行いました。
 できる範囲で体力の維持にも努めました。フィジカルコーチが学年ごとに室内でできるトレーニングメニューを与え、その振り返りを2週間後、選手から動画を受け取ります。その動画を見たコーチは、選手のフォームをチェックした後、改善点とともに次の動画を送り、フィジカル強化にあてる、という作業を隔週で実施していました。

――精神面と肉体面の両方にアプローチしていたんですね。
坪倉 いろいろ工夫しました。宇佐美貴史選手、東口順昭選手、堂安律選手といったG大阪アカデミー出身の選手からビデオメッセージをもらったことも、その一つです。特にU-13の選手たちは入団早々、活動停止になってしまった分、宇佐美選手から「入団おめでとう。これで君たちも僕の仲間だ」というメッセージを言われ、勇気づけられたと思います。

――選手が一堂に会するような場は?
坪倉 U-18とU-15の選手たちが集まる場所をテレビ会議で何度か設け、そこでは選手たちが情報共有していました。コーチはあまり口を挟まず、選手たちだけで話し合っていたようです。
 選手には各々の家庭環境もあります。ですから、クラブがあれをやれ、これをやれと言い過ぎるのも望ましくありません。逆に活動停止が続く分、選手には自分自身で一日をデザインする発想や行動力が求められます。今日は午前に勉強し、午後の空いた時間にフィジカルを強化しようなど、考える習慣を養ってほしいと思います。

――今年はサッカーのカレンダーに長い空白が生まれています。コロナ禍を経験している世代は成長が遅れるか、それともこの危機が将来のプラスにつながると思いますか。
坪倉 進路という側面を切り取ると、現在の中学3年生と高校3年生は、自分たちのプレーを把握されているか、プロになる道は残っているか、不安に感じているはずです。選手を送り出す立場としても、そこには一抹の不安があります。
 しかし、今できることに徹するしかありません。活動停止期間も、コーチングスタッフが選手個々のプレーハイライトを作成して、気にかけてくれるクラブや学校に送るなど、普段とは異なるアプローチをしました。こういった状況でも、選手たちが進路を決める上で少しでも役立つことを模索していきたいと思います。
 年齢や立場を問わず、難しい時期だからこそ学べることも多々あります。ですから、自分も含めて活動休止期間に学んだことや習慣を、今後に生かしていきたいと思っています。

――サッカー活動の再開後、PSDをどのように活用していきたいですか。
坪倉 ビデオ機能を有効に使いたいと思っています(5時間のアップ無料)。選手のページにプレー集を紐づけることも、クラブのゲームモデルやプレー原則の見本となるシーンを集めて、全員で共有しておくことにも役立てられそうです。オンライン会議などでパソコンを使う時間が増えている今、コーチングスタッフにはPSDもコミュニケーションを深めるための一つのツールだと認識してもらえればいいと思っています。